新型コロナウイルス最新エビデンスの紹介

こんにちは!田野整体院の田野悠介です。

 

今回は岐阜大学大学院 脳神経内科分野で教授をされている下畑享良先生が出されている情報をご紹介します。

 

 

専門的な文面で分かりにくい部分もあるかと思いますが、有益な情報ですので自分が関連しそうな部分だけでも参考にしてみてください。

 

 

今回のキーワードは,無症状患者の感染性,低酸素状態の簡便な改善法,個人用保護具の限界,川崎病,新しい神経合併症(主幹動脈閉塞症,筋炎),抗体の動態と検査の意義,ワクチンは諸刃の剣,レムデシビル承認の是非です.経済活動の再開のために一刻も早いワクチン,治療薬の開発が期待されますが,その承認は純粋に科学的根拠に基づいて行われるべきです.なぜなら背速な薬剤承認は,患者の命を縮める恐れもあるためです.

◆無症状患者の感染性.ベトナム・ホーチミンにおいて患者と濃厚接触した14,000名中のうち,鼻咽頭拭い液PCR検査が陽性であった49名のなかから,30名が前方視的研究に参加した.なんと13名(43%!)は経過を通して無症状だった.PCR検査の陽性率を症状の有無で比較すると,無症状感染者のほうが19日目まで陽性率が低く(P<0.001;図1),より早くウイルスが除去されているものと考えられた.また無症状感染者のうち2名が,接触者4名に感染させていた!→ 無症状感染者はかなり多い,かつ自分が感染していることに気付かず,誰かに感染させうるという根拠となる論文.感染は症状で分からないので,濃厚接触者にはPCR検査をするしかない.medRxiv. April 29, 2020.

◆確立した重症化因子.高齢(65歳など),慢性肺疾患,心血管病,糖尿病,肥満,免疫不全宿主(AIDS,ステロイド・免疫抑制剤長期使用,骨髄・臓器移植),喫煙,腎疾患進行期,肝疾患.New Engl J Med. April 24, 2020.

◆腹臥位による低酸素血症の改善.COVID-19では低酸素血症に対して酸素吸入が効きにくく,かつ非侵襲的陽圧換気療法もエアロゾルを発生するため行えない.このため早期から気管内挿管が選択されるが,これは人工呼吸器不足に拍車をかける.2017年のChest誌の論文で,急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の低酸素血症に腹臥位(うつ伏せ)が有効で,気管内挿管を防止ないし遅らせる効果が報告されている.本研究では,救急外来に低酸素状態(SpO2 <90%)で来院し,酸素吸入しても改善に乏しい患者50名を対象として,腹臥位の効果を検証した.酸素吸入しつつうつ伏せになってもらったところ,うつ伏せ前84%(四分位範囲75-90%)が,5分後には94%(90-95%)に改善した(P=0.001).ただし13名(24%)では効果がなく, 24時間以内に気管内挿管された.考察には腹臥位→左・右の側臥位→坐位と30~120分で変えていく方法が提案されている.Acad Emerg Med. April 22, 2020.

◆完全防御の難しさ.WHOが推奨する個人用保護具(N95マスク,目の保護具,隔離ガウン,手袋)のウイルス防御効果についての検証試験.救急外来にて,成人ないし小児の患者に対し,気管内挿管と血管確保を,医師2名,看護師2名で行うというシナリオのもと,マネキンに咳による飛沫を暴露させた(紫外線を当てると可視化できる蛍光マーカーを含む飛沫を,MAD Nasalという霧化器を用いて作成した).4名×2(成人,子供)で8名のマネキンで行った.結果は露出していないはずの髪の毛に7名,首に6名,靴に4名,耳に1名で蛍光が検出された(図2).よってPPE(個人保護具)では皮膚への暴露を完全に防ぐことができない可能性がある.すべての皮膚を覆う衣服の着用が望ましいと著者は言っている.処置後,顔を触らずに,早めにシャワーを浴びることが良いかもしれない.JAMA. April 27, 2020.

◆エアロゾル中のウイルスRNAの残留.武漢の2つの病院内の3つのエリアから採取したエアロゾル中のウイルスRNA濃度を測定した研究.①患者エリアでは,隔離病棟や風通しが良い病室では非常に低い.しかし換気の悪い患者用トイレでは上昇していた.②医療スタッフエリアでは,個人用保護具(PPE)着脱室では高い.しかしPPEの消毒後,ウイルスは検出されなくなった.③公共エリアではほとんど検出されなかったが,混雑するデパートの入り口と病院隣接地でやや高く,無症状感染者がそこにいたためと考えられた.以上より部屋の換気,トイレやPPEの消毒は,エアロゾル中のウイルスRNA濃度を低下させ,感染予防に役立つ可能性がある.ただし本研究では,エアロゾル中のウイルスが実際に感染性を持つかの検討がなされていない.Nature. 27 April 2020.

◆川崎病.川崎病は発熱,眼球結膜充血,特徴的な口唇・口腔所見,非化膿性頸部リンパ節腫脹,不定形発疹,四肢末端の変化を呈する小児の血管炎症候群である.英国から川崎病の診断基準を満たすCOVID-19の6ヶ月女児が報告された.川崎病治療ガイドラインに従い,IVIGと高用量アスピリンにて治療し解熱した.著者らはCOVID-19は川崎病を呈しうること,ならびに川崎病とCOVID-19の病態の関連についての検討が必要と指摘している.→ COVID-19は成人,小児を問わず,血管炎+凝固異常を引き起こしうる.Hosp Pediatr. April 7, 2020.

◆神経症状(1).若年患者における主幹動脈閉塞症.ニューヨークからの報告.2週間で50歳未満の主幹動脈閉塞による脳梗塞を5例経験した(男女4:1,33~49歳).NIHSSは平均17点と重症.若年主幹動脈閉塞症は,過去12ヶ月では,2週間で0.73例のペースであり,明らかに増加している.凝固異常や血管内皮障害が関与している可能性がある(D-dimerは52~13800 ng/mlと著増).New Engl J Med. April 28, 2020.

◆神経症状(2).筋MRIで異常信号を呈した急性筋炎.起床後の筋痛,下肢筋力低下(MMT 3レベル),転倒にて発症し入院.発熱や呼吸器症状なし.CK 25,384 IU/Lと著増.CRP 54 mg/L,リンパ球減少を認めた.入院4日目に発熱,5日目に胸部CTですりガラス陰影,7日目に酸素投与開始.筋MRIで両側外閉鎖筋と大腿四頭筋に浮腫を認めた.筋炎に関連する既知の抗体は陰性.呼吸状態が悪化し,11日目にICU入室.肺胞洗浄液で初めてPCRが陽性となった.急性筋炎の鑑別診断としてCOVID-19感染も考えるべkじ.Ann Rheum Dis. April 23, 2020.

◆神経症状(3).COVID-19に感染したパーキンソン病患者10名の転帰.イタリアと英国からの報告.イタリアの2例は施設入所中の進行期PD.1例は感染後も無症状.認知障害と幻覚を認めた1例は呼吸器症状出現し死亡.英国の8名(男女6:2)は全例60歳以上であったが,感染後,5/8例でL-ドパの必要量が増加した.また不安や疲労,起立性低血圧,認知機能障害,精神症状といった非運動症状が増悪した.3名が死亡した.高齢で罹病期間の長い患者(平均78.3歳,罹病期間12.7年)における死亡率は40%(4/10名)と高く,デバイス補助療法 (DBSないしLCIG)中の4名では50%だった.パーキンソン病において,高齢,進行期,デバイス補助療法は予後不良因子の可能性がある.Mov Disord. April 298, 2020.

◆抗体の動態と検査の意義.中国からの報告.PCR陽性患者285名の検討で,IgGは発症17~19日後に100%が陽転,IgMは20~22日後に94.1%が陽転.いずれも発症後3週間上昇し,IgGは横ばいになるが,IgMは若干低下する.IgG/Mとも重症例で高力価であった.また63名で経時的(3日毎)に抗体を測定したところ,入院期間を通じてIgG/Mとも陰性であった症例が2名(3.2%)存在した.1回目検査で抗体陰性で,その後,IgG/Mの少なくとも一方が陽転化した26名の検討では3つのパターンがあった(①IgGとIgMが同時(9名),②IgMが先(7名),③IgGが先(10名)).IgGは初回に検出されてから6日で横ばいになった.

MERS(中東呼吸器症候群)の診断基準に採用されている①抗体陽転化,あるいは②IgGの4倍上昇をCOVID-19患者41名に当てはめると,29名(70.7%)が基準を満たした(①は21名,②は8名).また胸部CTでCOVID-19が疑われたもののPCRが陰性であった52名中4名(7.7%)で抗体が陽性.濃厚接触者でPCR陰性の148名中7名(4.7%)で抗体が陽性であった.→ よって抗体検査はPCR検査を補うものとして有用である.Nat Med. April 29, 2020.

◆ワクチンは諸刃の剣.ワクチンの有効性は,どれだけウイルスに対し抑制効果のある中和抗体の産生を誘導できるかにかかっている.一方,ワクチンでは「antibody-dependent enhancement (ADE)」と呼ばれる,むしろ病原性を高め逆効果となる現象の存在が知られている.SARS-CoVの場合,ワクチンにより誘導された抗体が,Fc受容体を発現する細胞(単球,マクロファージ,B細胞)に結合し,これらの細胞にウイルスが侵入しやすくしたり,Toll様受容体の活性化やサイトカインを介して,炎症や急性肺損傷を引き起こすことが知られている(図4).ワクチンにより誘導される抗体が中和抗体となるか,ADEを引き起こすかは,エピトープの種類,親和性,アイソタイプなどに依存する.SARSでは,不活ウイルスや,ウイルスベクター・DNAワクチンによるS蛋白によるワクチンがADEを引き起こしたことが報告されている.さらに高齢者においても,安全で有効な抗体の誘導できるかの検証が必要である.このような制約のあるワクチンよりも,安全で効果的な中和抗体を大量生産して投与するほうが良いかもしれない.→ 早期の経済活動の再開のためにも,本邦のDNAワクチン開発に期待したいが,ADEによる増悪リスクを忘れてはならない.Nat Rev Immunol.April 21, 2020.

◆治療薬(1).降圧剤ACE阻害剤(ACEi)/ARBの結論.5つの後方視的な臨床試験のメタ解析が報告された.これらの降圧剤を使用している高血圧合併患者308名は,使用していない1172名と比較して,重症化率は44%減少(オッズ比0.56:95%信頼区間0.34-1.89),死亡率は62%減少(オッズ比0.56:95%信頼区間0.19-0.74)した.ACEi/ARBはCOVID-19患者に安全して使用でき,おそらく重症化や死亡を抑制する.medRxiv. April 28, 2020

◆治療薬(2).米国FDAが緊急認可し,厚労省が「特例承認」を行うレムデシビル(ウイルスRNAポリメラーゼ阻害剤).4月18日の記事で紹介したように,先行する臨床試験で有効性が期待できたものの(NEJM. April 10, 2020),対照群がないため評価が難しい状態であった.今回,武漢の10施設で行われたランダム化比較試験の結果が報告された.組み入れ基準は18歳以上で,発症から12日以内,低酸素血症と画像上肺炎を認める症例とした.治療群(静注10日間):プラセボ群=2:1で割り付けられた(158名:79名).主要評価項目は臨床的に改善するまでの日数で,改善の定義は,6段階スケールで2段階改善するまでの日数,もしくは退院までの日数のいずれか早い方とした.主要評価項目は両群間に有意差なし(治療群:プラセボ群=21.0日:23.0日,ハザード比1.23)(図5).死亡率も有意差なし(14%:13%).患者発生が減少して予定人数が集まらず,統計的検出力が低下したことを考慮しても,PCR検査によるウイルス排出量や,28日後のPCR陰転化例の割合にも有意差なく,かつ治療群では有害事象のために中止した患者が多かった(12%対5%)ことから,明らかに失敗だろう.→ 米国立アレルギー・感染症研究所(NIAD)は,レムデシビルは回復期間を短縮する(11日対15日;P<0.001)とプレスリリースしたが,論文は未発表.こんな中途半端な状況で日本は本当に「特例承認」するのだろうか?にわかに信じがたい.

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